My diary.

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グラフィックカードを探して(自作PC始めました:連載第12回)

はじめに

ビデオカード、グラフィックスボード、グラフィックカード。短くグラボと呼ぶ人も居ます。呼び名は違えどこれらは全て同じパーツを指す言葉です。今回の記事ではグラフィックカードという呼称で統一して話をさせていただきます。

グラフィックカード自作PCの描画性能を決定づける重要なパーツです。もし貴方が最新のPCゲームを最高設定で軽快にプレイしたい場合、あるいは3DCGソフトをストレス無く快適に動作させたい場合、複数のディスプレイを同時に使用したい場合、このパーツが全てのカギを握る事になります。

市販の自作PC向けグラフィックカードを見てみると、同じGPUを搭載しながら異なる形状やスペックを持つ製品が存在する事に気づかれると思います。GPUとはグラフィック・プロセッシング・ユニットの略称で、グラフィックカードは必ずこのプロセッサと専用のグラフィックスメモリを搭載しています。NVIDIA GeForceGTXシリーズを例にとると「GTX980」などと記載されている部分がGPUに該当します。

GPUNVIDIAAMDの2社で開発されており、各メーカーは2社から発表されたGPUの基本性能を元に動作クロックの引き上げ、冷却性能の強化を施した独自のグラフィックカードを制作し、販売するというのが一般的な流れです。故に同じGPUを搭載していてもカードの大きさや仕様、スペックが異なる製品が存在するのです。

NVIDIAGPU

NVIDIA社は性能別に複数GPUを開発しています。最も一般普及率が高いGeForceGTXシリーズは主にWindowsを利用するPCゲーマーの需要が高いGPUですが、iMacでも採用されているように、グラフィック一般の処理に於いてオールラウンダーな一面も持ち合わせています。CAD制作などのワークステーション向けにはOpenGLに特化したQuadroシリーズがありますが、色々調べた上で私のiMacでの使用感、そして偏見を加味して言わせていただくと、「QuadroシリーズでPCゲームは出来ないが、GeForceGTXシリーズだと大抵の事は出来てしまう」という印象になります。ゲームにPhotoshop、3DCGを一台のPCで楽しみたい私にとっては、今のところGeForceGTXシリーズ一択となります。

リファレンスカードの存在

私がグラフィックカードを探し始めた頃、NVIDIAはハイエンドGPUの新製品としてGTX980及びGTX970を発表しました。それに続いて各社が独自仕様のグラフィックカードを順次販売し、日本市場にも一斉に製品が出回り始めます。代理店経由という販売形式の関係上、通常日本では販売されない製品も幾つか存在するので、興味のある方は海外のAmazonで確認すると面白いと思います。

NVIDIAGPUだけではなく、外部メーカーが製品開発の基準とするグラフィックカード、所謂リファレンスカードも製造しています。製品発表初期の段階では各メーカーがこのリファレンスカードをそのまま販売する事もあります。リファレンスカードなので、どのメーカーから販売されていてもスペックと形状は同じです。あくまで公称値のスペックで動作するように設計されているので、各メーカーが後から販売する独自機能を有したモデルよりは動作クロックも冷却性能も高くはありません。標準モデルという形容が一番当てはまると思います。

私は購入目標を(この時点での)新製品であるGTX980とGTX970に定めました。そして各メーカーの製品を色々と比較して調べてみたのですが、スペックこそ標準となるものの、LEDでGeForceGTXの文字が緑に輝くNVIDIAリファレンスカードのデザインが一番気に入ってしまいました。そこで何とかGTX980かGTX970のリファレンスカードを入手しようと探してみたのですが、既に両製品共に入手不可能となっていました。

GTX980とGTX970

GTX980とGTX970は2014年に発表されたNVIDIA GeforceGTXシリーズのハイエンドGPUです。2015年に発表されたGTX980TiとGTX TITAN Xがその上に位置しますが、今回は私が購入検討していた時期の話ですので除外させていただきます。

GTX980とGTX970に使用されている第2世代MaxwellアーキテクチャGPUコアGM204は、これまで同社のハイエンドGPUが抱えていた高TDPの削減を実現しました。従ってハイエンドでありながら省エネモデルであるのが一番の特徴と言えます。これは今後の電源ユニット選びに大きな影響を与えそうです。加えて一定以上の負荷がかかるまではファンが動かないセミファンレス仕様のモデルも発売され、静音性の面でも申し分ありません。

今回グラフィックカードへの予算は4万円を目安にしていたので、基本はGTX970としながら、もし安くなれば頑張ってGTX980にしたいと思っていました。マザーボードMSIなので、グラフィックカードMSI社にしようか、などと考えつつ、私は毎日のように価格調査に明け暮れていましたが、そんな中、あのGTX970問題が発覚したのでした。

GTX970問題

グラフィックカードの機能を推し量る水準となるのが搭載するグラフィックスメモリの量です。基本的にメモリの量が多いほど安定した描画性能が期待できます。GTX970の場合、グラフィックスメモリの量はGTX980と同じ4GBです。PC版の『Grand Theft Auto V』はグラフィックを全て最高設定にした場合ピーク時には3.5GB程度のグラフィックスメモリを使用するようなので、まさにハイエンドにふさわしい搭載量と言えるでしょう。

ところが2014年末から2015年初頭にかけ、GTX970を購入したユーザーから相次いで「グラフィックスメモリ使用量が3.5GBを超えると急激に性能が低下する」という報告が寄せられ、事態は急変します。検証動画も投稿されていたので拝見しましたが、ゲームプレイ中明らかに描画が遅れる現象、所謂「カクツキ」が発生している場面が映し出されていました。

実際メモリは4GB積まれていたのですが、GTX980のそれとは違いGTX970の場合3.5GBと残りの0.5GBが区別される仕組みになっていました。NVIDIAの説明によると急激に性能が低下する現象は4GBあるグラフィックスメモリ全てに並列アクセスが発生すると起こるとの事で、GTX980と比べて1基削られたL2キャッシュが結果的に足を引っ張る格好となり、0.5GB分のメモリ帯域幅が3.5GB分の帯域幅の7分の1にまで落ち込むそうです。

NVIDIAは後に当初レビュワー向けに発表していたL2キャッシュとROP数を下方修正しましたが、この問題が発覚するまでに商品を購入していた世界中の多くのユーザーを落胆させる出来事だったのは間違いありません。実際にはGTX970は3.5GBのグラフィックスメモリ+0.5GBの補助メモリを搭載する製品だと考えた方が良いと思います。

グラフィックカード選定のやり直し

4万円の予算にほぼ合致していたGTX970がこのような状態に陥った為、私はグラフィックカードの再選定を余儀なくされました。もう一つの有力な選択肢だったGTX980はカタログ通りの機能で好評を博しており、問題が発生したGTX970の失速も相まって、実売価格が一向に下落する気配を見せません。考えあぐねている間にNVIDIAは新製品GTX960を発表。GTX660の置き換えに最適という見解でした。実勢価格は予算内で、私が所有するiMacはGTX660Mを搭載しています。これも何かの縁かと一瞬考えたのですが、GTX980の丁度半分になった各種スペックがどうしても引っ掛かり、選考から除外する事にしました。

これだけの騒動があったにも関わらず、私はAMD社を選ばず、NVIDIA社のグラフィックカードに目を向けていました。それはあのリファレンスカードのデザインが頭から離れなかったからに他なりません。自分でも不思議に思いますが、搭載するならあのデザインしかないと決意していました。

私はゲームとPhotoshop、3DCGを一台で楽しめるハイエンドPCを組み立てる事を目標に掲げています。ただ、この時点では既に予算と目標に合致するリファレンス仕様の新品グラフィックカードを入手するのは不可能でした。そこで目を付けたのが中古市場です。私は自作PC用の中古パーツを扱う店舗を軒並み調査する事にしました。中古であればリファレンス仕様のグラフィックカードは新品よりも多く出回っています。もしかしたらGTX980のリファレンスカードが出回るかもしれません。

この調査期間中私は何度か秋葉原へ足を運び、そしてインターネット上の情報も毎日のようにチェックしました。ご存知のように中古品との出会いは一期一会です。ある程度の運も関係するかもしれません。空振りも多かったように思いますが、実店舗を回ったおかげで中古グラフィックカードの出品率と価格動向が良く理解できました。やはり新製品登場時には前世代のグラフィックカードが一時的に多く出回る傾向にあるようです。

そして調査開始から数週間後のある日、私の目にとあるグラフィックカードが飛び込んできました。それがGTX TITANです。

GTX TITANについて

2015年現在GTX TITAN XがGeForce GTXシリーズの最上位モデルとして販売されていますが、私がお話しするGTX TITANは2013年に発売された初代のモデルです。初代GTX TITAN最大の特徴は、NVIDIAコントロール・パネルでの切り替えによりDPフルスピードモードが利用できる点です。アメリカのスーパーコンピュータが搭載しているTesla K20Xと同じGPUコアGK110を搭載しているため、名前が同じTITANになったという逸話があります。

 演算処理に優れるGPUコアをGeForce製品に転用したという経緯を持つGTX TITANは、純粋なゲーミング向けGPUであるGeForceシリーズの中でも異色な存在です。ゲームにも強く、3DCGのレンダリング時にも効果が期待できる、まさに一石二鳥のグラフィックカードと言えるでしょう。

発売当時は新品で10万円を超える販売価格でしたが、2年が経過した現在は中古市場において4万円台で出回るようになりました。私がグラフィックカードを探していた時期に新製品として発表されたGTX980が各種ベンチマークにおいて概ねGTX TITANを超える性能を見せた事がユーザーの買い替えを促進し、その結果中古市場に多くのGTX TITANが出回るようになったのだと思います。

1台のPCでゲームとPhotoshop、そして3DCGを楽しみたい私にとって、GTX TITANはこれ以上ない魅力を備えています。シングルカード最強の座は奪われましたが、2015年現在でも十分にハイエンドで通用するグラフィックカードが私の予算内で入手できる状況が生まれていました。この好機を逃すわけにはいきません。私は中古市場にGTX TITANが希望する価格で出回るのを辛抱強く待つことに決め、並行して電源ユニットを選定する事にしました。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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