My diary.

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ハイレゾ始めました。(ハイレゾの話:連載第1回)

はじめに

私が音楽漬けだった90年代初頭、世界はCDで溢れていました。当時レコード店に勤めていた私は趣味も音楽鑑賞だった為、ほぼ毎日CDかアナログ・レコードを買い求め、自宅あるいは通勤途中にむさぼるように聞き入っていたものです。

21世紀になり、スティーブ・ジョブズ氏が「電話を再発明する」と宣言してappleが発表したiPhoneは、通信の新たな次元を提示するにとどまらず、iTunesの爆発的普及という相乗効果を生み出しました。音楽が本格的にダウンロード販売へ移行を始めると、まずアメリカからCDショップが次々と姿を消し、その波は徐々に各国へと波及していったように思います。ビッグアーティストの新作CD売り上げが極端に伸び悩むのもこのあたりからだったと記憶しています。

気が付くと私の身の回りからはCDとアナログ・レコードが一切無くなっていました。無論意図的に売却した結果です。私はその資金iTunesのカタログ購入費用に充填しました。iMacを母艦として購入した音楽はiPadiPhoneiPod Touchに同期、CDウォークマン時代には考えられない量の曲を持ち運べる便利さに酔いしれていたのです。「音楽を聴く文化の形態が変わったのだ」と自分に言い聞かせるように・・。

きっかけは些細なトラブルから

ある日iMacのイヤホンジャックが故障し、私は代替手段としてUSB-DACを利用する事にしました。AudinstのHUD-Miniを購入し、再びiMacに納められた音楽をヘッドホンで楽しめるようになったのですが、この時初めてAAC形式で収録された楽曲の高音の伸びが不自然であったり、音場の広がりが少ないように感じました。

AAC形式で揃えていた約2000曲の半数以上にこの違和感を感じたので、私は中古CDを買い直してリッピングし、CDと同等の再生品質を維持出来るappleロスレス形式で楽曲を保存し直すことにしました。かなりの時間と労力を費やしましたが、結果ライブラリの全ての曲を納得できる形で再構築する事が出来ました。

ちなみにCDの標準再生品質は16bit/44.1kHz/1411.2kbps とされています。

私見ですが任意の楽曲に初めて接する時のクオリティがこのCD品質である場合、それ以下のクオリティで保存されたファイルに対しては遅かれ早かれ違和感を抱く事になると思います。

私の場合iTunesストアで購入していた楽曲の殆どが過去にCDで聴いていたものだったのでこの差異に気が付いたのですが、ダウンロード販売全盛の現在に於いては初めて接する音楽のファイル形式がAACという方も少なくないでしょう。音楽の楽しみ方は人それぞれであるべきなので、高圧縮率と一定の再生品質を実現したAAC形式に対して特に非難するつもりはありません。ただ、AACというファイル形式はビットレートに関わらずCDの再生品質を完全に再現する事は出来ないので、この点が気になる方はCD版を購入して専用プレーヤーで聴くか、可逆圧縮形式でリッピングしてPC等にデジタルデータとして保存し、鑑賞する事をお勧めします。

 さらなるトラブルが決定打に

私はappleロスレスで再収録した楽曲をiPhone5sで楽しんでいました。ミュージック再生アプリは諸事情によりapple純正からHF Playerに変更しています(この顛末は別記事に記載しているので、興味のある方はご一読いただけると幸いです)。使用するイヤホンはapple純正のEarPodsです。このEarPodsは耳に接する箇所にゴム部分が全く無い為に耐久性が高く、装着位置が上手く合うと非常に臨場感のある音場が生まれるので気に入っていました。ようやく満足出来る音楽再生環境が整った、そう思っていた矢先にまたしてもトラブルが発生します。

これは完全に私が悪いのですが、EarPodsのメンテナンスをしようと思い、自作PC用に購入していたダストブロワーをスピーカー部に吹き付けた所、特定の周波数が出なくなってしまったのです。恐らく風圧で内部の繊細な部品を壊してしまったのだと思います。

新品を買い直せば出費も3500円程度で済みます。ところがこの時期私はHF Playerを利用していた事もあって、ハイレゾに少し興味を持ち始めていました。iPhone5sは標準でCD品質までの再生に対応していますが、ポータブルアンプと専用アプリを併用する事によってハイレゾ再生も可能となります。今まで殆ど興味を抱かなかったハイレゾ音源でしたが、にわかに気になってきてしまったのです。

ハイレゾについて

CDが持つ情報量である16bit/44.1kHz以上の情報量を持つ音源がハイレゾ(High-Resolution)音源と呼ばれています。ハイレゾ音源配信サイトVICTOR-STUDIO HD Musicの説明ではCDが持つ1秒間の情報量1411.2kbpsを基準とした場合、リニアPCM24bit/96kHzが4608kbpsで約3.26倍、同24bit/192kHzが9216kbpsで約6.52倍の情報量を持つとされています。ちなみにiTunesでお馴染みのAACは標準で256kbps、CDの約0.18倍です。

日本国内の有名なハイレゾ音源配信サイトには他にもe-onkyoやmoraがありますが、iTunes上がりの自分からすると現在はカタログ総数、アルバムや曲単位の価格でiTunesに大きく溝を開けられている印象を受けます。ただし上記のデータや各種情報を鑑みると、曲の品質は大いに異なるようです。AACとはファイルサイズも価格も段違い、しかしながら曲が持つ本来の質感を素直に再現する事が出来る可能性が有る音源、それがハイレゾなのではないか感じました。

iPhone5s+ポータブルアンプか、それとも・・

ハイレゾ音源配信サイトを持ち、iPhone用アプリHF Playerも提供しているONKYOはHA-200というiPhone向けのポータブルアンプを販売しており、これを手持ちのiPhone5sに接続すれば一応ハイレゾ音源を聴く環境は整います。私は当初このHA-200の購入を前向きに検討していましたが、どうしてもiPhone1台で完結出来ないという利用環境が引っかかりました。無論他社が販売する様々な大きさのハイレゾ対応ポータブルアンプも世の中には存在しますが、余計な部品を付けるという印象は拭えません。

加えて、ストレージ問題も気になっていました。私が所有するiPhone5sの容量は32GBです。現在600曲近い楽曲がappleロスレスで収録されている為、既に空き容量が逼迫しています。ここにハイレゾ音源を加える事になると、仮に一部既存のアルバムを差し替えたとしても、新たにアルバム数枚入るかどうかというレベルになってしまいます。

音楽専用再生機器という選択

私はこれまでiPhone5sで音楽を鳴らす事を念頭に色々と考えていましたが、一旦全てを白紙に戻す事にしました。ハイレゾ音源を持ち運んで聴く事を考えた場合、appleのプロダクトにこだわる理由が一つも思い浮かばなかったからです。iPodiPhoneという完成されたプロダクトのデザインや利便性を崩さずに音楽を楽しみたい場合のファイル形式はAACからCD品質の16bit/44.1kHzまでが限度。私はそう感じました。

携帯する利便性を損なわず、もっと単純にハイレゾ音源を楽しみたいと考えるようになった私は、専用プレーヤーの購入を検討する事にしました。ポケットに入る大きさで大容量、1台で完結できるシンプルなプレーヤー。それこそが自分の求める形でした。

自作PCを作成した時と同じく、自分の中にあるapple縛りから解放された状態で改めて目を向けてみると、世の中には様々な特徴や外観を持つ魅力的なデジタル音楽再生専用プレーヤーが出回っていることに気が付きました。日本国内のメーカーであればやはりSONYWALKMANが目立ちます。フラッグシップモデルは高価な印象を受けますが、入門モデルの位置付けであるAシリーズは値段も現実的で使い勝手も良さそうです。

国外のメーカーで気になるのは徹底した高級路線を突き進む韓国のiriver社です。妥協を許さない製品作りが特徴で、現在までに9種類ほどの製品を市場に展開しています。ただし価格面でも妥協はしないようで、同社のブランドAstell&Kernシリーズで最も高価なモデルは実勢価格が70万円近くするという非常に強気な設定です。AKJR-64GBは同シリーズの最安プレーヤーですが、それでも5〜6万円台という価格帯なので、初心者の私が手を出すのには少しだけ敷居が高い気がします。しかしながらいつかは手に入れてみたいと思わせる不思議な魅力を持つブランドです。

価格、という面でハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤーを調べると必ず登場するメーカーがあります。それがFiio(フィーオ)です。

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Fiioは中国の広州に本社を置くオーディオメーカーで、現在までに数種類のコストパフォーマンスに優れるハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤーを発表しています。中でも2014年12月に発表されたFiio X1は並行輸入品が1万円台で入手出来るというハイレゾ対応ポータブルオーディオプレーヤー最安製品です。色々と悩んだ挙句、私はハイレゾ入門用にこのFiio X1を手に入れることに決めました。

 

次回はFiio X1の製品概要や使い心地をお伝えしたいと思います。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。