My diary.

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PCケースと調理器具(自作PC始めました:連載第5回)

はじめに

PCケースは調理器具に似ていると思います。

私は料理を自分で毎日作っているのですが、自作PCに取り組み始めて間もないころ、火にかけて調理している鍋の様子を見て思ったことがあります。鍋に何かを入れて煮る時、蓋をした方が調理時間を短縮する事ができます。これは密閉された空間が温度上昇を促進し、水を早く沸騰させるからです。これと同じことがPCケースにも言えないでしょうか。

窒息型のiMac

私が所有するインテルベースのiMacは、メモリ拡張用スロットを除けば、ユーザーがアクセスできるハッチを持たない一体型の構造になっています。自作PCの世界では良く「窒息型」と呼ばれる構造です。iMacの筐体が他のPC用ケースと異なる点は、表面がネジ止めされていない所です。これによって吸盤付き取っ手などの特殊な工具を使用しない限りは分解自体が不可能となり、一般的なユーザーは中のパーツを窺い知ることは出来ません。無論無理に分解した時点で正規の保証は受けられなくなります。

窒息型筐体の長所はホコリや水分の侵入、つまり外的要因における故障のリスクが非常に少ないという点にあります。PCは繊細な精密機器ですので、内部に余分な物質が付着するのはあまり好ましくありません。iMacのように工場での生産時に筐体を密閉してしまえば、保管時や輸送時のトラブルが発生する確率も低くなり、本体内部のメンテナンスを行わなくても長期間稼働する事が可能になります。

しかしそれは、内部パーツの発熱を処理できる限界点も抱えることに繋がります。TDPが高いパーツは排熱処理上の問題が発生するために組み込めず、結果モバイル向けパーツや省電力設計のパーツを多用するという「基本性能の限界」に直面します。熱を持ったのが鍋であれば蓋を外して内部を冷まし、全体の温度を下げてしまえば良い話なのですが、iMacではそうもいきません。

ケースとパーツは表裏一体

発熱は主にPC内部で発生します。熱の発生源はCPU及びグラフィックカードで、それを組み込んだマザーボード、HDDなどのストレージや電源ユニットがそれに続きます。基本的にはPCに負荷がかかる作業が発生すると個々のパーツ温度は瞬く間に上昇していきます。特にCPUはクーラー無しで使用した場合簡単に摂氏100℃近くまで温度が上がり、保護回路が働いてPCがシャットダウンしてしまいます。このような状態を繰り返すとPCの寿命に深刻な悪影響を及ぼします。

CPUクーラーを設置する事は自作PCを組み立てる上で言わば絶対条件になりますが、排熱の為のエアフロー設計が適切でないケースや、パーツやケーブル類が隙間無く詰め込まれ、エアフローが妨害されているケースは、内部に空気が循環する余裕が無いために、PC内部の温度上昇が早く降下が遅いという「蓋をした鍋」のような状態となり非常に危険です。自作PCの醍醐味はまさに自分好みのパーツでPCを組み上げることにあるのですが、排熱処理を万全にする為のエアフローについては熟考する必要があるでしょう。特にTDPが高いパーツの導入を行う場合は、相応のケースと冷却装置を準備しておかないと苦労することになるでしょう。

エアフローは筐体のみで完結する問題ではありません。組み立てた自作PCを設置する場所も大いに関係してきます。PCケースに開けられた空気孔を塞ぐような位置に置いてしまうと、空気の循環は妨げられ、吸気と排熱がスムースに進みません。理想を言えば底面を除く全ての面が見渡せるような状態で置くべきなのですが、電源を取るコンセントの位置も考えると部屋の中央にPC本体があるのも構図としては不自然なので、大半の方は四方の壁のどちらかに寄せた状態で設置されていると思います。私の場合は背面だけを壁に近づけるように配置しました。筐体の見通しが良いという事は、エアフローを万全にするだけではなくメンテナンス時のアクセスが容易になるという事にもつながりますので、まさに一石二鳥の配置になります。

まとめ

私はエアフローが良好な大型PCケースのCorsair Air 540を購入し、多少の静音性と引き換えに排熱の不安を取り除くことにしました。アイドル時には40℃台の数値を保っているCPUやグラフィックカードも、負荷がかかると簡単に倍近くの温度に上昇します。実際この時PC本体の排気口に手を当ててみると、暖かい空気が流れ出てくるのが分かります。自作PCのヘビーユーザーの中には冗談交じりで「暖房いらず」という表現をされる方がいらっしゃいますが、ハイエンドパーツを多用し、負荷のかかる作業が多くなるほどPC本体が比例して熱を帯びてくるのは本当のことです。

おおまかに言ってしまえば、エアフローが良好なケースはファンを多く搭載させる為に開口部が多く、静音性に優れるケースは内部の駆動音を外に漏らさない窒息型の設計になっているのでエアフローを両立させるのが難しい傾向にあります。

自作PCを楽しむ上で最も重要なのは安全性の確立であり、求める性能をきちんと維持することができるケースを選ぶことが大切だと思います。静音にこだわって窒息型のケースを使用しても、パーツが煮えてしまっては元も子もありませんので・・。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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